BOOKLOVE読書会

不思議でクールな物語の世界へ【2020.2.16 村上春樹読書会レポ】

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こんにちは。BOOKLOVE部長の棚瀬です。

2月16日に「村上春樹」のテーマで読書会を行いました。今回のテーマは私が決めました。

普段は村上龍のファンを公言しているのですが、なぜ今回あえて村上春樹をテーマにしたのかというと、以前に村上春樹の作品を読み終えたときにその世界観や作品に込められたメッセージをいまいち掴むことができず消化不良の感覚があり、ハルキストの皆さんにその素晴らしさを教えて頂きたいと思ったからです。

しかし、なぜか参加者5人中3人が村上龍のファンという謎の構成になってしまい、「いかに龍が素晴らしいか」を語る時間が長くなってしまいました(笑)

それでも村上春樹作品の良さを存分に知ることができる会になりました。

□今回の読書会で紹介された作品

・ノルウェーの森
・ポートレイト・イン・ジャズ
・神の子どもたちはみな踊る
・アンダーグラウンド
・女のいない男たち
・東京奇譚集
・世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
・村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール

□参加者の皆さんの感想

・村上春樹の作品には好きなものが多いが、なぜ好きなのかと問われるとその理由がよくわからない。明確に「ここが好き!」という感覚ではなく、文体や作品の雰囲気が好きなのかもしれない。

・中学生の時に春樹作品に出会い、その小説に描かれている世界にとても強いあこがれを覚えた。長編では終盤にかけて盛り上げて最後はぼわ~んと曖昧に終わることが多いが、そのあいまいさ加減が作品の魅力なのではないか。春樹作品を読み終えると、自分の人間としてのレベルが一段上がったような気分になれる。

・これまで春樹作品にはあまりなじみがなかったが、改めて読み終えてみて幅広い世代から支持を受けている理由がわかったような気がする。日本だけでなく世界中で翻訳されているのは作品に込められたメッセージに普遍的な価値があるからだろうか。

・結末があいまいだったり、伏線を回収しないまま終わったりすることが多いがあまり論理的に考えすぎず、感覚的にイメージを捉えると良さがわかるかもしれない。

・作品の随所に差し挟まれる海外文学やウイスキー、音楽などに関する薀蓄からは作者の偏愛と敬意を感じた。知識がない分野のことでも、こういった形で触れることができると「大人の世界」の片鱗を覗いたような気分になれる。

・「ライ麦畑で捕まえて」の翻訳を行った時に「文学に共通する水脈があることがわかった」と発言している。村上春樹は小説の執筆だけでなく海外文学の翻訳も数多く手掛けている。

ここから先は私個人の私見となりますが、ご容赦ください。

今回の読書会には「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を読み終えてから参加しました。

村上春樹の作品はこれまでに「海辺のカフカ」しか読んだことがなく、その独特の世界観と文体になじむことができず、作者が示唆しようとしていることも掴むことができませんでした。

しかし今回「世界の終わり~」を読み終えて、はじめて村上春樹作品の魅力を感じることができたように思います。

読者を煙に巻くような結末は「海辺のカフカ」と似ているように感じましたが、その「わからなさ加減」にとても心地よいものを覚えました。

優れた小説とはどんな小説か、人それぞれ違うと思いますが、私は「答えではなく問いを発してくるもの」ではないかと考えています。

読み終えたときに「あー、面白かった」と言ってページを閉じることができるのも、もちろん「いい小説」なのかもしれませんが、何年たっても忘れることのできない物語というのは単に面白いだけではなく、「これを読み終えてからあなたはどう生きるのか?」という問いかけを発しているものなのではないでしょうか。

「世界の終わり~」に登場する2人の主人公が物語の終盤で下した決断からは、作者から読者へと向けられたそんなメッセージが伝わってきました。

まだ村上春樹の作品は2作しか読み終えておらず、ファンを自認できるレベルではありませんが、今回の読書会を経てなぜ村上春樹が世代や国境を越えて多くの人々から支持され続けているのか、その理由の一端がわかったような気がします。

感想を交換する中で参加者の方が、2009年に村上春樹がエルサレム賞を受賞した時に発表したスピーチをご紹介してくださいました。一部抜粋したものを転載しておきますが、とても素晴らしい内容なのでぜひ全文読んでみてください。

□エルサレム賞受賞時のスピーチ(一部抜粋)

私が小説を書く理由は一つしかありません。

それは、個々の魂の尊厳を浮き彫りにし、光を当てるためなのです。

物語の目的は警鐘を鳴らすことです。

システムが我々の魂をそのくもの糸の中に絡めとり、貶めるのを防ぐために、システムに常に目を光らせているように。

私は、物語を通じて人々の魂がかけがえのないものであることを示し続けることが作家の義務であることを信じて疑いません -生と死の物語、愛の物語、人々が涙し、恐怖に震え、腹を抱えて笑う物語を通じて。

これこそが、我々が日々、大真面目にフィクションをでっち上げている理由なのです。


全文はこちら(書き起こし.com)⇒https://www.kakiokosi.com/share/culture/89

□次回予告

開催日 3月15日㈰
テーマ ディストピア小説

次回のテーマは「ディストピア小説」です。ディストピアとは「絶望郷」と訳されることもありますが、「ユートピア」の対義語です。SFの形式で書かれることが多いですが、ジャンル問わずあなたのおすすめの絶望譚をぜひご紹介ください。

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