トモ君のお母さんから、受験する科をどうしたらいいですか?と電話があったのは、
願書を出すギリギリの時でした。
学校の先生からは、生活科は無理だから福祉科に変更するようにと言われたそうですが、
トモ君はガンとして、「ぼくは福祉には興味はない。いやだ」と言うのだそうです。
私は「生活科がダメでも福祉科で合格できる(福祉科は定員割れ)ので、チャレンジしてはどうですか」と言いました。
自分が納得していないと、入学してから続かない可能性があると思ったからです。
落ちてしまったのなら仕方がないと諦められるかもしれない。
でも、チャレンジもしないで福祉科に変えたら、一生後悔するかもしれない。
そして、トモ君は、みごと合格しました!!
卒業を祝う会には、お母さんと作ったたくさんのお菓子を持ってきてくれました。
嬉しそうな顔を思い出します。
その後1年くらいした時に、スーパーでお母さんとバッタリ出会いました。
「トモは、友だちがいっぱい出来て、毎日楽しくやっています。
相変わらず勉強はしないですけどね~」とお母さんが話されました。
チエ子さんとそんな思い出話をしている中で、
「トモ君は今どこにいるのですか?」と聞いてみました。
実は高校を卒業後、きっとどこかに就職しているのでは?と思っていたのです。
チエ子さんの言葉を聞いて私は正直びっくりしました。
「この春から岐阜のお菓子屋さんに就職が決まってね~」
「パティシエになる何とかっていう専門学校へ行ったんやよ」
話を聞いているうちに、腕がぞわぞわっとなるのを感じました。
トモ君は夢を叶えたんだ!
すごいな~!すごいな~!
トモ君は、人より少し成長が遅い子でした。
勉強ができないことで、友だちからバカにされたり、
先生からも心ない言葉を言われたりしたこともありました。
そんなトモ君が、高校へ行って友だちがたくさん出来て、
「ケーキを作る人になりたい」という小さい頃からの夢を叶えようとしているのです。
もちろん、これからの方が大変かもしれません。
がんばってほしいな~と、心から応援したい気持ちです。
チエ子さんには別れ際に、こうお願いしました。
「トモ君がケーキを作るようになったら、
岐阜まで買いに行くからねとお伝えください」と